TRACコーチ 大西正裕

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TRACの大西です。

大注目の世界陸上男子100mが日本時間の明け方に終了しました。
結果はご存知の通り、ボルト選手の長年のライバルであるガトリン選手が優勝し雪辱を晴らしました。引退を表明しているボルト選手は全盛期の巻き返しが影を潜め、前半ので遅れがレース終盤まで響きました。(予想は大きく外れてしまいました…苦笑)

大混戦のレースとなりましたが、我々陸上ファンだけでなく広くその名を知れ渡らせたボルト選手の偉大さを改めて感じるレースでした。盛り上がりすぎてこれで大会が終わってしまいそうな雰囲気ですが、まだまだ世界陸上は開幕したばかりレースは続きますので是非陸上競技を楽しんでください!

さて、混戦となった100mを少しマニアックな目線で検証していきたいと思います。

陸上競技は「順位」と「記録」の2軸で評価されます。世界陸上やオリンピックなどでは「記録」よりも「順位」が重視されます。「記録」は自分のコンディションに整った時に出すことができるためチャンスは多くあります。それに比べて「順位」がつくチャンピオンシップはその日、その瞬間での競争となるため重視されます。言ってしまえば「世界記録保持者」になるチャンスは無数にありますが、「世界チャンピオン」は2年に1度の世界陸上と4年に1度のオリンピックでしかチャンスはありません。
長距離のレースではハイペースで飛ばしてバテてしまわないように、スローペースでレースを展開しラストスパート合戦が見られることもしばしばあります。(今大会の男子10000mは記録も順位も争う珍しいレースでした。)

順位は言わずもがな決勝での順位が実力であることに異論はありませんが、もう一つの軸「記録」について評価したいと思います。100m決勝に進出した選手8名、日本選手3名の自己べストと年度ベストから各ラウンドの記録の達成率を見てみましょう。
各選手の実力を自己ベストで評価しがちですが、年度ベストで見るとよりその選手の直近のコンディションがわかり結果に反映されやすいです。

 

<実は力負けしたボルト>
ボルト選手の決勝のタイムは実は年度ベストタイでした。決勝のタイムに対する年度ベストでは100%実力を発揮したと言えます。一方で、ボルト選手に土をつけたガトリン選手は年度ベストを決勝で更新してきました。100%以上の力を決勝で出すことができていました。
コンディションが不十分だったとはいえ、少なくとも現状ではベストな走りをしたと言えます。そして、ガトリン選手は予選、準決勝と精彩を欠いたレースを見せていましたが、全ては決勝への布石として余力を残したレースだったと推測できます。
表を見てわかる通り、決勝で年度ベストを上回るタイムを出せたの上記の2名だけであり、世界の超一流選手でも決勝レースで実力を出し切る難しさが見て取れます。

<実力者のラウンドの進み方>
決勝を走った上位6名が予選、準決勝、決勝とラウンドを進むごとにタイムを上げています。実力が伯仲している中でも、このようにラウンド毎にタイムを上げ上げられるのは「決勝が勝負」という意識があるからでしょうか。一方で、下位2名の選手は「決勝進出」が目標であり、予選、準決勝で力を出し尽くしタイムを落としています。同じファイナリストでもラウンドの進み方で、決勝のスタートラインでの余力度が違うことがわかります。
決勝に残ってもメダリストになるためには、さらに上のレベルの戦いが待っていることが予想されます。

<ファイナリストへの道>
今大会では日本史上初の3名の準決勝進出という快挙でした。10秒0台の記録が自己ベストかつ年度ベストであり、決勝進出も大いに期待されました。サニブラウン選手はスタート後にバランスを崩すアクシデントもありましたが、年度ベストに対して準決勝のタイムはの達成率は98%前後でした。予選で同等の記録で走っていたプリスコット選手、蘇選手は準決勝でも99%を超えており決勝へ残りました。年度ベストがそんなに日本選手と変わらないだけに、悔やまれます。ですが、決勝の舞台は手を伸ばせば届く位置に来ていることを改めて感じさせてくれる日本選手の活躍でした。

今までは絶対王者ボルトの陰に隠れてしまっていましたが、メダル争い、ファイナリスト争いは毎回熾烈な戦いがなされています。今大会では自己ベストに比べて、年度ベストが似通った選手が集まり差が大きくならず混戦となりました。

記録よりも勝負。

そんな意識が選手達から垣間見る事が出来たレースでした。いちマニアとしては勝負も記録も見たいんですけどね。