TRACコーチ 大西正裕

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TRACコーチの大西です。

ついに日本人初の9秒台が東洋大学の桐生祥秀選手によって記録されました!

昨日より福井県にて日本学生陸上競技対校選手権大会(通称:日本インカレ)が開催されており、その100m決勝にて記録されました。
この大会には、先日行われたロンドン世界陸上400mRでメダルを獲得した多田修平選手も出場していました。
世界陸上からひと月も空かずのレース、世界選手権後には足を痛めてたという情報もありで、記録の面では難しいのではないかと思われていた大会でした。

会場となる福井運動公園陸上競技場は、スタジアム型の競技場ではないため風が大きく吹き込んでいるコンディションでした。追い風になってはいるものの安定しない風に選手たちは頭を悩ませていました。
陸上競技では追い風が有利とされており、100m、200m、110mハードル、100mハードル、走幅跳、三段跳の種目では風速計にて計測される風が2mを越えると「追い風参考記録」として扱われます。(2015年に桐生選手が追い風3.3mで9秒87を記録していましたが、2mを超える風のため公認されませんでした。)

今日の男子100m決勝では、追い風1.8mの絶好のコンディションの中『9秒98』を記録し、日本記録を19年ぶり更新しました。
近年出そうで出なかった9秒台がようやく達成され、日本スプリント界の盛り上がりを象徴しています!

さて、その桐生選手の今大会のレース分析をしてみたいと思います!
動画サイトから桐生選手の歩数を目測でカウントしてみました。結果が下の表になります。

今シーズンは3月のオーストラリアのレースで10秒04(歩数がカウントできず分析していません)という好タイムでシーズンインをし、表のように10秒0台の記録を連発していました。日本選手権では残念な結果に終わってしまいましたが、その後の7月のレースでも10秒05の記録をマークしていました。
100mを約48歩で駆け抜け、平均ピッチが4.7Hzと高いピッチが特徴と言えます。今大会では追い風の影響もあり、高いピッチをキープしたまま普段より約1歩少ない47歩で走りました。走るスピードはピッチ×ストライドで決定されるため、高いピッチをキープしたままストライドを広げることが出来たことが大記録の達成となりました。このレベルで1歩歩数が減るということは大変難しいことです。

今回の大記録の達成の背景には、桐生選手をはじめコーチ、スタッフの各位の努力の賜物であることに異論はありません。しかし、これまで出そうで出なかった「9秒台」がなぜ達成されたかを考えてみたいと思います。
前述の通り、シーズン序盤から10秒0台を連発しており仕上がりが良く、いつ出てもおかしくない状況でした。これを阻んでいた一つが「風」です。今回は絶好の風が吹きましたが、シーズン序盤では風に恵まれませんでした。
スプリント種目では、追い風0.1mで約0.01秒記録が変わると言われています。そこで、今期の記録は無風に換算した時、公認されるギリギリの2mで換算した時の記録を表に加えてみました。すると、どの試合でも今大会くらいの風が吹いていれば、どの試合でも達成可能な数字であったことがわかります。歴史的な出来事ではありますが、桐生選手の実力からすると出るべくして出たという印象が強いです。
これは桐生選手だけでなく、リオ五輪代表の山縣選手や世界陸上で入賞を果たしたサニブラウン選手も同様であり、誰が一番にいい条件の中走るか?というレベルにありました。

高校3年で10秒01の現役選手最高記録を出してから、早5年。
ずっと9秒台を期待され続けてきた選手が9月9日という『9』という数字が並ぶ日に達成されたのも何かの縁を感じますね。