TRACコーチ 大西正裕

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TRACの大西です。

男子スプリントが盛況だった2017年のシーズンも今週末に行われる愛媛国体を持ってひと段落となります。
愛媛国体には先日の実業団の大会で10秒00をマークした山縣亮太選手(怪我のため欠場)、今シーズン大活躍の多田修平選手が100mに出場予定です。
桐生選手に続く日本人9秒台は見られるのでしょうか?好記録に期待したいですね!

今回は100m走の記録を決定づける要因である「最高疾走速度(最大スピード)」について説明したいと思います。
「最高疾走速度」が数値がいくつであったかということがニュースでも取り上げられています。
「最高疾走速度」読んで字の如く、100m走中に選手が到達した最大のスピードを言います。この速さが100m走ではとても重要となります。

この「最高疾走速度」は主に2つの方法から測定されています。
1つは、区間タイムより算出する方法です。小学生で習う「み(道のり)・は(速さ)・じ(時間)」を使って算出できます。陸上競技では10m毎に区間タイムを取ることが多く、10mに要した時間から速さを求めます。この方法のメリットは、特殊な機材は必要がなく、小学3年生くらいの算数の知識があれば疾走速度を算出できます。デメリットとしては、レース中の詳細な速度の変化がわかりません。10mとはいえ選手の速度は刻一刻と変化していますので、その変化捉えることができません。

例)ボルト選手 世界記録樹立時(9秒58)の60m〜70m区間(0.81秒)の最大疾走速度

  10m÷0.81秒=12.34m/秒

もう一つの方法は、レーザー測定器を用いる方法です。選手の後方より選手の体にレーザーを当て、そのレーザーの反射スピードによって速度を測定します。この方法では、選手の速度の変化を随時捉えることができ、どこまで加速したか、どこで最大速度に達成したかが明らかとなります。しかしながら、高価な機材であること、レーザーで選手を追う測定スキルが必要とされます。

なぜ「最大疾走速度」を測定したいのでしょうか?
その答えは下の図にあります。縦軸がタイム、横軸が疾走速度となり、タイムと疾走速度の相関図になります。

2015シーズンと記録別にみた男女100mのレース分析について(松尾ら,2015)より引用

 

相関とは一方の変数に応じて、もう一方の変数が変化することを示す統計の手法です。端的に言えば、100m走のタイムが速い人は疾走速度が高い。疾走速度の高い人は100m走のタイムが速いということです。図を見てわかる通り、プロットのばらつきが少ないため、ほぼ例外なくその傾向にあると言えます。そのため、疾走速度は100mのパフォーマンスを決定づける要因として認知されています。

日本人が9秒台を出すためには、15年ほど前の研究(杉田ら、日本選手権の男女100m走中のスピード分析. 2003)から60m以降で11.63m/秒 以上の疾走速度が必要と報告されています。多くのスプリンターが9秒台を目指す中で、最大疾走速度11.6m/秒以上の獲得することが目標となり最大疾走速度が注目されてきました。

最近では、2013年に桐生選手(当時:高校3年)の時に記録した10秒01時には、最大疾走速度11.64m/秒と9秒台を出すために必要な条件を満たしました。
しかし、この速度の出現地点が50m〜60m区間で記録され、先の研究で報告されている60m以降では最高速は出現せず、9秒台に迫る10秒01で時計は止まりました。それから4年。日本人の悲願を達成した桐生選手の9秒98の際には、最大疾走速度11.67m/秒を記録し、65m地点で出現しました。9秒台の条件を2つ満たし、研究の結果を立証するものでした。

次は誰がこの9秒台の条件を満たすのか。あるいは、潜在的に9秒台を出す可能性がある選手が現れるのか。
タイム、勝負以外の観点からも観戦するとスプリントの奥深さが味わえると思います。

成年男子100mは10/7(土)16:50〜 号砲です!!(※NHK Eテレにて16時より放送予定)