陸王でよく出ていた「ミッドフット接地」とは?

2018年01月04日 | TRACコーチ 大西正裕

TRACの大西です。
新年あけましておめでとうございます。本年もTRACをよろしくお願い致します。

ニューイヤー駅伝、箱根駅伝と日本のお正月の風物詩となる駅伝が行われました。
昨年末にヒットしたテレビドラマ「陸王」の影響もあり、駅伝に興味を持たられて観戦された方は多いのではないでしょうか?
(私も毎週楽しみに見ていました。)

ドラマ中では、「ミッドフット接地」という技術を習得できるかが主人公の競技の明暗分けるシーンが描かれていました。
どんな技術なんだろうと思った方もいるのではないでしょうか?

「ミッドフット」とは、足の裏(足底)を3つの部位に分けた際に、土踏まずあたりの部位を指す言葉になります。
なぜこの部位で地面に着地するといいのでしょうか?それは目的とする移動スピードによって説明することができます。

一番身近にある移動手段として「歩行」があります。歩行では踵から地面に着き、つま先の方へ抜けていきます。弧を描くように地面を蹴りだすことができます。(時速4km程度)

信号が変わりそうな時、電車に間に合わせようとする時、少し小走りになることはありませんか?接地中の動きはほぼ変わりませんが、「歩行」とは異なり、必ず一瞬空中に浮く瞬間があります。また、ジョギングのように景色や会話を楽しめるペースであれば、このような接地で走ることが多いでしょう。(時速8〜12km程度)

そして、駅伝やマラソンなどのトレーニングを行い、スピードを求めてくるとレベルに応じて接地が変化してきます。
昨日までの駅伝選手やマラソンのトップ選手では1km3分ベースに、20km、40kmとそのペースを刻めるようになることが求められます。1km3分というのは、50m走に換算すると9秒00で走る計算となり、小学5年生の全国平均(9秒29)を上回るスピードになります。当たり前と言えば当たり前なのですが、このスピードを楽に、長く、そして速くできるようになることが求められています。
長距離ではただ走っていれば速くなるとイメージしがちですが、今回の箱根駅伝のようにレースが高速化した今、その方法では太刀打ちできません。世界選手権やオリンピックではこの傾向が顕著です。

重要となるのがスプリンターにも通ずる「速く走るための技術」なのです。
短距離走と長距離走では走り方、接地の仕方が異なってきますが、限りなく短距離っぽい走りに近づけ、なおかつ非効率的にならない走りを習得する必要があります。その一つが、ドラマでも注目されていた接地の方法です。

ジョギングでは、歩行と変わらない接地であると説明しましたが、その共通項は「ヒールストライク(踵接地)」です。
この接地では、衝撃を足首、膝で和らげるため、長く走ることには向いています。しかしながら、地面からの反発も緩衝してしまうため、スピードを生み出すためのエネルギーをも緩衝してしまっています。また、ランニングフォームも踵から接地すると膝が大きく曲がり、腰が引け気味の走りとなりやすくなります。

わかりやすい実験がありますので、試して見てください。

踵だけで立ち(つま先を浮かせる)、10回その場で上にジャンプしてください。

いかがでしょうか?腰が引け、徐々に目線が落ちていきませんか?踵接地では衝撃を和らげてしまい、アクセルを踏むのに足首を使って地面を蹴ってしまい、足が返ってこずスピードが上がりません。踵で接地するということはこのジャンプと同じことが起きています。

接地した時に力を緩衝しないためにはどうしたらいいのでしょうか?
その一つの方法が、短距離選手にも見られるミッドフット接地(=フラット接地)と言えるでしょう。
どれだけ高いスピードを出すことができるかが勝敗を分ける短距離では、接地した時に力を緩衝してしまうことは大きなロスとなり、パフォーマンスを低下させます。そのため、力を緩衝しない、受け止めやすい姿勢で接地するということが重要となります。身体の前でも、後ろでもなく、真下に接地することによって膝や足首の曲げ伸ばしを少なくし、推進力を得ることができます。
ミッドフット接地とは、この体の真下への接地しやすくするために土踏まずのあたりに意識を持たせ、結果、膝や足首の曲げ伸ばしの少ないフォームで走れるようにするための方法だったのです。

箱根駅伝の6区山下りで、青山学院で東洋大学を抜き去るシーンがありますが、その際の二人の接地を見ると非常にわかりやすいです。
下りという条件ではあるものの、正面から見たときに青山学院の選手はほぼシューズの裏が見えてないのに対し、東洋大学の選手はシューズの裏が見えていることが確認できます。スピードが出る走りというのはこういう走りであるというの垣間見た瞬間でした。

レースの高速化が叫ばれている長距離ですが、より短距離に近い技術を習得することで長く走れるようになるという技術性が高まっているように感じた年末年始でした。